総会長挨拶


篠原先生の写真

篠原 一光

大阪大学大学院人間科学研究科

 第2回医療安全心理・行動学会を大阪大学にて開催させていただきます。本学会は医療安全の研究と実践に関わる医師・看護師・薬剤師など医療従事者と、心理学、行動科学、社会学等様々な研究領域で安全に関する研究をおこなっている研究者が協働し、医療安全を推進する場を作ることを目指しているものです。私自身は認知心理学の立場から道路交通安全を中心として研究を行っており、医療安全領域での研究を専門としているわけではありませんが、安全に関する心理学研究を行っている専門家と、医療安全領域の橋渡し役としてお役に立ちたいと考えております。医療安全を専門とされている方もまたそうでない方も、本大会にご参加いただき、広く「安全」について語り合い考える機会としていただきたいと願っております。


藤田先生の写真

藤田 眞幸

慶應義塾大学医学部法医学教室 教授

 このたび、心理学者であられる篠原一光先生と、実際に病院で診療と医療安全管理を行っておられる遠藤純男先生とともに、共同総会長として、第2回学術総会の開催に携わらせていただくこととなりました。私の専門は法医学であり、心理や行動に関する専門家ではありませんが、これまで、医療事故や労災事故などの法医解剖を担当して事故がどのようなときに起こりやすいかをみてきました。また、病院で病理専門医として診療に従事してきた経験、慶應義塾大学病院の医療安全管理委員会のアドバイザーとしての経験、医療安全の研修会での講師としての経験や、さらには医療安全管理者養成研修に受講者として参加した経験などから、人間の心理・行動を考えることが、医療安全における重要な鍵であるという強い思いをもっています。
 医療事故防止を考える上では、最初から治療方針を間違えていたり、処置等をやり損なったりするといったような問題もありますが、誰しもが陥りがちな落とし穴、思い込み・勘違い・うっかりしたやり忘れなどが、どのようなときに生じやすいかという問題があります。また、医療安全の知識は実際に行動に移されて、はじめて、本当の意味で理解されて普及したと言えるものですが、それを実現させるためには、人間の行動について考えることが大切になってきます。業務の中で、ごく自然に苦痛なく安全な方法を実践してしまうような環境、そういった心理的快適性の実現についても考える必要があります。
 本学会におきましては、いろいろな専門分野の学者達が、自分の経験や考察に基づいて意見を述べ合い、それぞれの分野の知識をすりあわせて、最適の解決策を講じていくことができるようになることを目指しています。また、他の分野の専門家の難しい知識を、自分の専門にも活かしていくことができるといったような点も期待されています。このたびの学術集会が、参加される方々にとって、今後の医療安全推進の大切な機会となりますことを心から願い、開催の御挨拶とさせていただきます。


遠藤会長の写真

遠藤 純男

医療法人徳洲会 大和徳洲会病院 医療安全管理室長/脳神経外科主任部長

 この度、第2回 医療安全心理・行動学会学術総会の共同総会長を拝命いたしました。
 本学会は医療安全を推進するために必要な人的側面の向上のための学術団体で、医療安全に関する心理・行動研究を普及し、人的側面上の課題の解決活動によってより高度な医療安全文化を有する医療を構築します。そのために、医療従事者、心理・行動・コミュニケーション・社会学等の研究者、法曹界など、広く様々な分野の方々との交流の場を提供します。
 私は2022年1月から、医療法人徳洲会 大和徳洲会病院の医療安全管理室長として、院内の医療安全に関しての複数の取り組みをさせていただいてきました。
(1)医療安全啓蒙・教育活動:1)医療事故調査制度、2)医療安全学と失敗学、3)Team STEPPSを通しての患者中心のチーム医療とコミュニケーション。
(2)院内活動:1)ヒヤリハット、インシデント・アクシデント報告の分析と対策立案、2)各種委員会の整備:臨床倫理委員会と臨床倫理コンサルテーション、薬事委員会と臨時薬事委員会、ハラスメント委員会、3)急変時対応、4)警察とも連携した暴言暴力対策、5)他。
医療安全活動を行う際に重要なことは、医療安全管理者と医療安全管理室に対する職員や関係者(患者・家族等)からの信頼を如何に得るかです。私たち医療安全管理者は、相談されたことに真摯に対応し、結果をフィードバックしながら最終的により良い改善策を提案し、行動を起こすことが重要です。職員や関係者間の良好なコミュニケーション作りも重要で、当院では言いたいことや本音を自由に言える職場環境作りを医療安全活動の優先目標の一つに掲げています。また、患者や家族がチーム医療の中心にあることの認識もチーム内で共有しなければなりません。 このように、基本に立ち返った普段の取り組みが、職員や関係者の医療安全に対する意識を変えていき(心理)、医療安全文化が職場に行き渡り(医療安全文化の醸成)、問題意識を持ちながら仕事をする(行動)職員が増えていくことが期待でき、最終的に、患者や家族が安心して診療を受けられ、職員が安心して仕事ができる医療機関を作り上げることができると考えています。
 全国の医療関連施設で医療安全に関するさまざまな取り組みがなされています。医療安全心理・行動学会は、各施設や研究者の取り組みの発表・討論・情報交換や共有、施設・研究者間の連携を行うなどの場を提供することで、医療安全の取り組みの質や内容を高め、施設・研究者間で連携して取組みを行うなど、学会の場を利用しての種々な活動や研究が可能になります。皆様には、本学会を積極的に活用していただけましたら幸いに存じます。


理事長挨拶


小田克彦

医療安全心理・行動学会 理事長
東北大学医学部臨床教授
岩手県立中央病院 循環器センター長 医療安全管理部長


 本学会に興味を持たれ、当サイトを訪れていただいた皆様、ありがとうございます。
 医療安全心理・行動学会は、国内的にも世界的にも非常にユニークな学会で、医療安全の研究者、実務担当者と心理学、行動学の研究者が一堂に会し、医療安全上のさまざまな問題を両者の視点から議論することが可能です。映えある第1回の学術総会は2023年7月29日、30日に東京大学で行われました。まだまだ生まれたてのほやほや、参加される皆様のお力でどんどん発展させていただけたら、この上ない喜びです。
 第2回の学術総会は、2025年3月8日、9日の2日間、大阪大学コンベンションセンターでの現地開催及びWEB配信で開催されます。テーマは「医療現場と心理学・行動学の架け橋」となっております。演題の申込は2024年9月1日から10月31日となっておりますので、どうぞ皆様、奮って演題を申し込んでいただき、日頃の医療現場での悩みを心理学、行動学的なアプローチで議論する場に参加していただきたいと思います。また、心理学、行動学のお立場から、医療現場での研究を希望、企画されている研究者の皆様も大歓迎です。一緒に共同研究の輪を広げましょう。
 私の本業は心臓外科医です。心臓血管外科の医療はチーム医療そのもので、さまざまな問題に日々直面します。人事異動で配属された新メンバーの医療安全への認識の違いをリーダーとしてどう理解し、その新鮮な視点を尊重しつつ、チームとしての機能をどう保つか、不安全行動を行いがちなメンバーにどうフィードバックをするのが適切か、心理学的、行動学的な視点があればどのように考え、行動できるのだろうかと模索中です。第1回がそうであったように、第2回の学術総会でも数多くの学びがあると期待しております。
 医療安全担当者になったばかりの方、やっと慣れてきた方、ベテランの域に入りつつも新しい考え方やアプローチを求めている方、また、心理学、行動学の若手、ベテランの研究者の皆様、ぜひ大阪で楽しく議論いたしましょう。もちろん、WEB参加も大歓迎です。皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

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